仕事や育児をしていると、あ、これあったらいいな・・・と、ドラえもんにすがるのび太のような気持ちになる時が多々ある。
仕事編
月齢毎に1本ですむワクチン開発
まずは仕事編。小児科医なら誰しも思ったことがあると思うのだが、毎回1本で済むワクチン、誰か開発してくれませんか。生後2か月から始まる怒涛のワクチン、親御さんも次何打っていいかわかりません、今日とりあえず何を打ちにきたかもあやしい状態でいらっしゃる。
私たちのほうは、お子さんが来るたびに、あくせくと1本ずつ注射に薬をつめ、1本1本間違いがないかを確認し、左腕・右腕・左ふともも・右ふとももにブスブスと打ちまくり、ギャン泣きさせるのが仕事である。今最大で、四種にヒブを加えた五種混合ワクチン(百日せき・ジフテリア・破傷風・ポリオ+ヒブ)があるようだが、一気にたくさん混合する、というよりは、「生後2か月用のこれ1本(Hib+肺炎球菌+B肝)」「1歳用のこれ1本(麻疹風疹+水痘+おたふく+Hib+肺炎球菌)」など、月齢ごとに1本で済むような製剤が開発されたら、打つ方も打たれる方も負担が少ないのにと思ってしまう。
ワクチンはおうおうにしてスケジュールがずれることもあり、必ずしも月齢ごとのセットが適応できないこともあるかもしれないが、だいたいは決まったセットを打つのだから、費用対効果も悪くないはず。
おすすめ静脈ルート評価システム
また、静脈ルートの場所を教えてくれるAIがほしい。この子はここの静脈が一番太くて発達してて、失敗しにくいです、的な評価もあるとなお良い。刺しやすさ★5つ、的な。ただでさえ大号泣されると末梢の血管はしまって取りにくいが、これが重症心身障害児や先天性疾患のあるお子さんだと、トランスイルミネーターを使っても、もはや糸みたいな血管しか見えない。こんなときAIがバーっとその子の血管を視覚化してくれるだけでも、だいぶ助かる。それより自分の腕を磨けといわれたらそれまでですけれども。
瞬間身長・体重計測システム
あと病棟や外来にあるといいのは、一瞬でその子の体をスキャンして、身長・体重を正確に出してくれるAI。体温計を耳でピピッと測るみたいに、身長・体重も測れたらいいと思う。というのも、体調が悪くてMAX不機嫌の子どもの身長・体重を測るのは、並大抵のことではない。看護師さんたちが必死になって子どもをおさえて身長をはかり、体重についてはじっとしているわけがないから、親と一緒に体重計にのって、親の体重を引く・・・というアバウトな感じで対処していることが多い。処方や投薬、発達の評価など、小児科医にとって正確な身長と体重は欠かせないデータであり、どっか企業が開発してくれたら需要ありそうなのになぁと思う。
マイナンバーで管理される電子母子健康手帳
あと10年くらいすると現実的になるかなと思っているのは、マイナンバーで管理される電子母子手帳。産まれたときの身長・体重、妊娠中のお母さんの体重や血液検査の結果、ワクチン、生後数ヶ月ごとの身長・体重などの発達・・・母子手帳はその子のすべてといってもいいくらい、大切な情報にあふれている。救急外来などで焦って受診されると、母子手帳を忘れてしまったというケースも少なくない。そんな時に、保護者の同意を得られれば、マイナンバーを入力して、オンラインでその子の情報が見られる電子母子手帳なら、すぐに情報を確認できる。身長・体重の曲線も、手書きで間違えそうになりながらプロットしなくても、自動で入力されたら楽ちん。
ワクチンについても、次のワクチンは1ヶ月後にこれ!みたいに、AIのほうからお母さんに教えてほしい。母子手帳だけでなく、そもそもその人の医療情報が電子アクセスできる時代に早くならないかと常々思っている。最高の個人情報であるから、マイナンバーとともに厳重に管理されなければ話にならないが・・・。
生活編
哺乳瓶専用ミニミニ食洗機
仕事上も色々あるが、生活編のほうが色々と思いつく。自分も含めて、世のお母さんたちには育児で少しでも楽をしてほしいと思っている中で、ほしい道具はいくらでもある。哺乳瓶の消毒は外来でもよく聞かれるのだが、実は消毒しているのは日本くらいだとか・・・というのも、海外では日本より食洗機が普及しているので、食洗機(つまり皮膚の常在菌や細菌が触れない状態)の洗浄&熱風での乾燥をした後は、哺乳瓶は消毒しなくてもOK、と海外の学会もステートメントを出しているのである。
手荒れもしない食洗機で洗い、かつ消毒しなくてもOK、とくれば、だいぶこれだけでも手間が省ける。ただし、ミートソースでグッチャグチャに油まみれに汚れた皿と一緒に、赤子の哺乳瓶を洗うのに抵抗を感じるお母さんや、親戚の声が気になる方もいるかも知れない。また他に洗う食器がないときに、哺乳瓶だけを洗うのに食洗機を回すのをためらったり、まとめて洗おうと思っても、その間に哺乳瓶を水につけて放置するほうが衛生上気になる場合もある。
そんな時に、哺乳瓶専用のミニミニ食洗機があると良いなと思う。しかも、夜中に稼働することも踏まえて、かなり静音。無駄にピーとか鳴らない。ミルク会社とか開発してくれないだろうか。
外来で相談される生活事項その2は、睡眠について。終わらない夜泣きは、全国のママたちを疲弊させている。もちろん子どもの発達段階でどうにも防げない夜泣きはあるのだが(睡眠退行)、少しでも改善する手立てはある。たとえば早朝覚醒を防ぐ一つの方法に、部屋を完全にきちんと遮光することがある。ただこれが意外と難しい。
夜泣きシェルター用ぼっちテント
遮光カーテンを使っていても、微妙にカーテンのはしの隙間から漏れる程度の日光でも、夏場はかなり明るく、早朝覚醒の原因になる。睡眠コンサルタントをしていた時にクライアントさんで、ガムテープでカーテンと壁をはっつけてます!って人もいたが、引っ越しで剥がしたりする時に壁紙がぐちゃぐちゃになってないか心配である。
我が家では実は、ぼっちテントなるものを使っている(Amazonで検索してみてほしい)。これは本来、オタクな人たちが、二次元アニメを見たり、推しアイドルのライブyoutubeを見たりするなど、自分ワールドなる空間をつくるために使う、遮光性のある立方体のテントである。ベリッと簡単にはがせる小窓のような細工もあり、通気性も保たれている。
恥ずかしながら決して広くない我が家では、新生児+母が寝る部屋と、2歳+父が寝る部屋を別々に確保できず、結果としてリビングにこのぼっちテントを起き、2歳の子どもはこのぼっちテントの中で寝ている。日中は小窓をはがしたりして楽しんだり、かくれんぼの場にもなって、寝室=こわい、というイメージもなく過ごしてくれているのがありがたい。
ただこのぼっちテント、きちんと子どもが怪我や事故がないように作られた規格のものではないし、もっというと防音効果があるとなお良い。パパの帰ってくる音で、せっかく寝かしつけた子どもを起こされて、憤慨するママの多さよ。そして起きて夜泣きが始まると、マンションのとなりの人に聞こえていないか、虐待だと思われていないか、はたまた隣で寝ている兄弟が起きなか・・・ヒヤヒヤである。
そんなとき、遮光かつ防音された空間が家の中にあるのは、ママたちの強い味方になる。以前twitterで、夜泣きしたらその子&ママ達が集う、防音の夜泣きシェルターみたいなのが街にあるといい、というつぶやきがバズったようだが、家の中にあるほうがはるかにマシだろう(同じく夜泣きの辛さを、ママ同士で共感しあいたい、という交流を求めていれば別だが)。
あとは、納豆を食べた後のおぞましくベタベタした子どもの手が、一回拭くだけでツルンツルンにきれいになるウェットティッシュなど、挙げればキリがない。外来で疲れ切ったママたちをみていると、本気でクラウドファンディングでもして開発しようかと思う。医師もどんどんベンチャーする時代、私も挑戦してみようか。
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